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榎本恵牧師のコラム

2019/02/04

正義を洪水のように 恵みの業を大河のように尽きることなく流れさせよ。   アモス5:24


今年も来月から、台湾、アメリカ、ブラジルへの宣教旅行へ出かけてくる。アシュラム集会を心待ちしてくれている現地のクリスチャンたちに会うのは、本当に心地よいものだ。言葉も、環境(地球の反対側のブラジルは今真夏だ)も違うのに、同じ「イエスは主なり」、「ヤソシツー(耶蘇是主)」「ジーザスイズロード(Jesus is lord)」「ジェズザセニョール(Jesus e senior)」という言葉が、軽々と全てを乗り越えていく。それだけで、なんだか一つになれたような一体感があるのだ。

ところで、私たちアシュラムセンターと台湾との関係は古い。父榎本保郎牧師が、初めて海外へのアシュラム運動を紹介するため台湾へ渡って以来50年近く、その関係は続いている。1970年代の戒厳令下の時代も、台湾長老基督教会の総幹事をしておられた高俊明牧師が、「台湾独立宣言」をし、政治犯として投獄されていた80年代も。そして台湾の民主化が進み総統選挙が行われるようになった90年代、そして今なお中国共産党政権による、政治的、経済的、軍事的圧力のもとにある現在まで、私たちアシュラムセンターは台湾愛修会(台湾アシュラム)とともに歩んできた。

今年で16回目を迎える「国際正義平和アシュラム」は、毎年台湾と日本で交互に行なっている。今年は、北海道で9月30日から10月2日の予定で開催される。「大地に響け、平和の調べ」というテーマを掲げ、台湾から30名の参加者を迎え2泊3日で行う。特別講師には、ブラジルアライアンス教会のジュランジール柳原一蔵牧師を迎え、また2日目にはアイヌ民族のトンコリ(弦楽器)と、台湾先住民の賛美、そしてアメリカ人女性宣教師キャロルサックさんによる「リラプレカリア」(祈りの竪琴)の共演を予定している。

明治時代からはじまる北海道開拓の歴史には、多くのキリスト者たちが関わっている。その苦難の歴史に想いを馳せるとともに、同時にそれが先住の民であるアイヌ民族にとっては差別と偏見の歴史であり、今も続く解放のたたかいの歴史であったことを忘れないために。

この「国際正義平和アシュラム」は、かつて私が住んでいた沖縄伊江島での「伊江島平和アシュラム」に参加してくださった台湾の羅栄光牧師との出会いによって始まった。先生は、台湾基督長老教会のリーダーとして、また「台湾連合国共進会」という、台湾の国連加盟運動の中心を担っておられる方だ。当時、先生は民主化の進む台湾に対して中国大陸から何万発というミサイルの砲弾が向けれれているという厳しい状況の中で、台湾全土を手を繋ぎ連帯を示していく運動を計画されていた。その忙しい身の中で、私たちの集会に参加くださったのだ。3日目の朝早く、私たち二人は伊江島の海岸を散歩しながら、この美しい島が沖縄戦の激戦地であったこと、戦後は米軍によって島の半分以上が基地として接収され、それに非暴力をもって抵抗し、土地返還運動の先頭に立たれた阿波根昌鴻さんの話などをした。すると突然、羅牧師に一つのビジョンが与えられた。「東アジアの平和と正義の実現を祈り求めるアシュラムを一緒に開催しようではないか。神に祈り、そのみ声に聞く。正義の伴わない平和は本当の平和ではない。台湾と日本だけにとどまらず、多くの国の平和と正義を求める人々の出会いの場となるように」これが、私たちの「国際正義平和アシュラム」の原点なのだ。

さて、聖書の中に出てくる正義、それはヘブライ語で「ツェダカー」という。その意味は「普通に想像されるように単に社会生活における法的な意味での正当性や、あるいはもっと一般的な意味での社会正義を意味するだけでな」く「神から世界に向かって放出される恵の力として理解されなければならない」(勝村弘也著「旧約聖書に学ぶ」より)ものなのだという。すなわち自国の利益にのみ当てはまる正義でもなく、力の強い者や一部の声の大きい者だけが主張する正義でもない。それは、人間だけにとどまらず、動物も植物さえも生かす、全て生きとし生けるものに平等に与えられた神の力なのだ。

「それは理想に過ぎない。自国を守る正義の前には、少々の犠牲は仕方ないことなのだ」、そんな声が聞こえてくる。しかし、本当の「正義」は、誰一人として泣くものも無く、海のサンゴから山の木々まで、全てのものが喜びの声をあげるものでなけれならない。私たちは、必ずその日のくることを信じ、「世が与える平和ではない」主が約束された平和のくることを待ち望みつつ、今年も、国際正義平和アシュラムを、北の大地で行おうと願っている。

正義を洪水のように 恵みの業を大河のように尽きることなく流れさせよ。 アモス5:24

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