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榎本恵牧師のコラム

2018/03/14

もし同胞が貧しく、自分で生計を立てることができないときは、寄留者ないし滞在者を助けるようにその人を助け、共に生活できるようにしなさい。   レビ25:35


2月6日から26日まで、ブラジル、ニューヨーク、台湾のアシュラムを回ってきた。わずか1ヶ月足らずの間に、地球をほぼ一周する距離を移動したのだから、我ながら驚く。しかも3週連続で、ポルトガル語、英語、そして台湾語の礼拝で説教したのも、今思えば不思議な体験だった(もちろん私は日本語しか話せず、全て通訳付きだったのだが)。

しかし、もっと不思議で、驚くべきことは、どこへ行っても私たち日本の同胞がおられ、それぞれ教会を造り、信仰を守っている姿に出会えたことだ。まさに、「こんなところに日本人」である。ブラジルでは、サンパウロから内陸へ280キロあまり、バスで6時間ほどの距離にあるバウルという町で、2泊3日のアシュラム集会を初めて持った。渡辺謙似の精悍な顔をしたバウルの教会の牧師は、日系二世で、日本語は片言しか話せない。こちらもポルトガル語はあいさつの言葉ぐらいしかできない中で、どうしたものかと案じていたのだが、蓋を開けてみると日本留学経験のある二人の女性が、通訳に立ってくださり、無事に礼拝説教も、アシュラムでの講話もこなすことができた。

けれども、90名あまりの参加者は、日系2世、3世たち。顔つきこそ私たちと変わりがないが、話す言葉も、歌う賛美も皆ポルトガル語である。私一人、日本語しか話せない。ただニコニコ笑うしかない、そんな孤独感を味わっている私に片言の日本語で親しく話しかけてくれたご婦人がいた。「ここにいる日系人のほとんどは、日本に出稼ぎに行った経験があるのよ。」聞けば、日本から牧師が来るというので、マリリアというここからさらに奥に入った町の教会の信徒たちがバス一台をチャーターして来てくれたのだ。マリリアは、日系移民のコロニアル(入植地)としては最大の町であり、多くの日系人が今も暮らしているという。今年日系移民110年を迎える中、このブラジルで生まれ育った2世3世たちが、今度は出稼ぎとして日本本国へやって来る。群馬県大泉、静岡県浜松、広島県因島、そんな地名がポンポンと飛び出す。皆工場労働者として女性も男性も働き、そのブラジル特有の明るい笑顔には、しかし苦労のしわが刻み込まれていた。今も家族の誰かが日本に残り生活している人もおり、滋賀県の近江八幡に住んでいるというと、琵琶湖に行ったことがあるという人も多かった。

実は、ブラジルアライアンス教団のジョエル今野牧師の娘さんも、大学の休みを利用し、3ヶ月のワーキングビザで神奈川県で働いているという。何をしているのか聞くと、コンビニ弁当の工場で働いているというではないか。彼女は、大学で心理学を専攻し、将来出稼ぎとして働きにきている日系ブラジル人の助けになりたいと、実地での研修を兼ね働いているのだ。私たちが、何気なく食べている弁当も、運転している車のハンドルも、実は彼ら日系移民の同胞が、作っている。気がつけば、コンビニのレジを打つ店員も、駅構内の立ち食いそば屋の職人も、そしてホテルの客室係も、外国人の人たちが普通に働いている。私たちの国は、好むと好まざるにかかわらず、彼らの労働力によって成り立っていると言っても過言ではない。

聖書は、常にその同胞を大事にすることを命じる。同時に寡婦や孤児、そして寄留者を大切にせよと命じる。中でも、遠く祖国を離れ外国に住む同胞を、ディアスポラと呼び、パウロをはじめ初代教会は彼らへの伝道が、キリスト教会の始まりでもあった。

「もし同胞が貧しく、自分で生計を立てることができないときは、寄留者ないし滞在者を助けるようにその人を助け、共に生活できるようにしなさい。」(レビ25:35)

この聖書のみ言葉は、決して過去のものでもなければ、ユダヤ民族にだけ通用するものではない。110年前、祖国を離れ、苦労の末ブラジルに定住した日系移民の子孫たちが、今度は祖国を目指して帰って来る。彼らにとって日本は、しかし言葉も通じない異国の地であり、その仕事は底辺のものである。またアジアの国々からも人々が仕事を求め日本にやって来る。彼らの姿は、ある意味隠されているのかもしれない。けれども、そんな彼らとどう出会い、どう付き合っていくのか、そのことが、今、私たち日本人に問われているのではないだろうか。ブラジルの抜けるような青い空とそこに住む人々の屈託のない笑顔を思い出しながら、私はそんなことを考えている。

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