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榎本恵牧師のコラム

2018/08/03

善い行いと施しとを忘れないでください。   ヘブル13:16


7月の初め、西日本を襲った未曾有の豪雨は、200名を超える死者を出し、今も懸命の行方不明者の捜索と、猛暑の中の復旧作業が行われている。私たちのところへも、遠くアメリカ、ブラジルから、お見舞いのメールが届いている。滋賀も相当激しい雨が降り、琵琶湖の水位が警戒基準を超えるという報道がなされていたが、私たちのところは、ひどい雨漏りはあったけれども、なんとか無事に過ごしている。それよりはむしろ、中四国の被害状況が凄まじく、特に呉のアシュラムの友の中に、大きな試練にあわれている方たちがおられる。私たちも、早速「ヨセフ基金」という、アシュラムセンター独自の義援金から、呉アライアンス教会宛に、お見舞金を送らせていただいた。

7年前の「東日本大震災」の時に、義援金を集めて被災地に送ったのだが、いかんせん事が起こった後に募金を集めても、私たちのような小さな団体では、必要な時すぐ支援を行えず、悔しい思いをしてきた。また、使い道も委員会の話し合いで決定することは非常に民主的で良いことではあるが、緊急の時にはまどろっこしい。そんな経験から、アシュラムセンターでは常時「ヨセフ基金」として、積立を行いもしもの時に素早く行動し支援できるようにと備えている。エジプトの宰相になったヨセフが、7年の豊作の後、必ず7年の凶作の時が来るとの幻を示され、穀物倉に、食料を蓄えたという故事にならい始めたのだ。2年前の「熊本震災」の時も、これが大いに役立った。もちろん多額な支援はできないが、今も、アシュラムの友を通して、岩手、熊本に支援を行っている。続けることの大事さは、アシュラムの祈りの姿勢と同じものだと思っている。

さて、そのような中で、私は自分の良いことをしているという傲慢さの鼻をへし折られるような経験をした。7月の海の日に、「第21回福岡1日アシュラム」が開かれた。九州各地から30名あまりが参加し、そのうち13名がアシュラム初参加という、大変嬉しいアシュラム集会であったのだが、その中に長崎県島原市にある島原教会から二人の信徒の方が参加してくださった。ひとしきり自己紹介が終わり、私が今回の豪雨の話を滔々とした後、島原からの参加者の一人が、ポツリと言われた。「27年前の雲仙・普賢岳の爆発と火砕流の時は、島原も大変でした」と。

忘れていた。1991年の6月に起こった普賢岳の火砕流の出来事を。41名の方が亡くなり、多くの家屋が、土石流に飲み込まれた。私はすっかりそのことを忘れていた。もちろん人間はコンピュータのように全てのことを記憶することはできない。けれども、私にとってこの27年前の雲仙・普賢岳の噴火は、決して忘れてはならないことだったのだ。沖縄にいる頃送っていた個人誌「シマンチュ通信」の1991年9月29日に、私はこの普賢岳の噴火被災地に支援の品を送ったこと、そしてそれに対して、一人の小学4年生の少女からお礼状の届いたことを書いているのだ。

「恵さん、お元気ですか。タオル送って下さって本当にありがとうございました。恵さんも体に気をつけて、お仕事がんばってください。さようなら」

50枚ほどのタオルを、郵便局の「雲仙・普賢岳噴火救援物資」で送った(しかも無料で)事に、こんなにも感謝してくれた彼女のハガキに、私は感動し、こんなことを書いていた。「一枚のタオルと、そして一枚のハガキで、こんなにも大きなつながりを、連帯感を覚えるのだ。彼女の書いてくれた『恵さんも体に気をつけて」の、この『も』の文字が、私の心に力強く、そして限りなくやさしく響いてくる」(「負けて勝つ」から)と。本当に恥ずかしいことだ。ここまでか感動し、その思いを綴っていた私が、たとえ27年前とはいえ、今回の島原からの参加者の一言がなければそれを記憶の彼方に放り出しにしたままだったのだ。

「善い行いと施しとを忘れないでください。」(ヘブル13:16)この「善い行い」「施し」という言葉は、いかにも上から目線すぎて好きになれない。(新改訳聖書では「善を行うことと持ち物を人に分けることとを怠ってはなりません」となる。どちらかといえばこの訳の方がいい)けれども、この「忘れないでください」という言葉が、今私の心に突き刺さってくる。しないのでもなく、できないのでもない。人はそれを忘れてしまう。もちろん先ほども書いたように、人間は機械とは違って忘れることを常とする。しかしだからこそ、「忘れないでください」なのであり、いつも思い起こさなければならないのだ。未曾有の大災害も、時とともに忘れ去られていく。悲しみも、苦しみも、痛みも、一月も経たぬうちに、それが人ごとである限り、記憶の彼方へと追いやられていくのだろう。次から次に起こってくる悲惨なニュースもいつしか心が動かなくなってくる。それが所詮人間なのだもの。けれども、その時に、「忘れないでください」と聖書の言葉が響いてくる。忘れないこと、思い起こすこと、このことこそ が大切なのだ。

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