トップページ > 榎本恵牧師のコラム > 目をまっすぐに前に注げ。あなたに対しているものにまなざしを正しく向けよ。
榎本恵牧師のコラム

2020/11/30

目をまっすぐに前に注げ。あなたに対しているものにまなざしを正しく向けよ。   箴言4;25


綱渡りの名人は、目当てを定めたら、そこから目をそらすことなく、真っ直ぐに渡るのだそうです。目線を少しでも落としたり、変えたりすると、たちまち足を滑らし、奈落の底へ落ちてしまう。名人は、どんなにバランスを崩し、体がふらついても、目線だけはしっかりと一点を見つめていたそうです。「目をまっすぐに前に注げ。あなたに対しているものにまなざしを正しく向けよ」(箴言4;25)。この箴言の言葉こそ、綱渡りの名人の姿勢でもあり、また私たちが、人生を生きる極意としなければならないものなのでしょう。

ところが残念なことに、この綱渡りの名人のように行かないのが、私たち凡人の常なのです。しっかりと目標を定めることが出来ず、ついふらふらとよそを見をし、逆風でも吹いてこようものなら、すぐ怖くなって下を見てしまい、あっという間に落ちてしまう。私にはそんな経験などないと豪語する方は、きっとおられないのではないでしょうか。それよりはむしろ、せっかく目当てを見出しながらも、つい目を逸らしてしまったために・・・。そんな嘆きの声が響いてくるのです。

ところで、先日の「日光オリーブの里アシュラム」で、今回のコロナ禍について話しながら、「人生には3つの坂がある。上り坂、下り坂、そしてまさかの坂だ」とかつての小泉首相ばりに話したところ、参加者の1人松坂智広兄から、こんなことを言われました。「実は人生には、もう一つ坂があります。それは『真っ逆さま』の坂です。」と。松坂兄は、東京で不動産業を営んでおられました。事業も順調で、羽振りも良かったのでしょう、不摂生な生活と多忙の中で、とうとう脳梗塞で倒れてしまうのです。そこから彼の人生は、まさに「真っ逆さま」。病院や銀行で呼ばれる「松坂様、松坂様」が「真っ逆さま、真っ逆さま」と聞こえたと言う、笑うに笑えないほどの状態に陥ってしまったのです。

綱渡りの綱を踏み外した時、人は真っ逆さまに、奈落の底へと落ちて行くものです。ところが、松坂兄は、そうではありませんでした。彼はその逆境の中で、本当の目当てと出会うのです。彼の育った家庭は、熱心なクリスチャンであり、彼の兄は、高名な牧師であり、また神学者です。彼一人が別の道を行っていたのでした。しかし、神は、思いがけない「真っ逆さま」を通して、彼にもう一度本当の目当てを、生きる目的を示してくれたのでした。彼は今年無事、神学校を卒業し、伝道者の道を歩もうとしておられます。辛かった過去を笑顔で語り、笑いにまで昇華させる。彼はもう新しい綱を渡り始めています。今度は、最も確かな目当てを見つめつつ。

最初にも書いたように、私たちは誰一人として最初から「綱渡りの名人」であるものはいません。みんな、どこかで足を踏み外したり、足を踏み外しそうになったり、そのぎりぎりを綱渡りしているのです。しかし、たとえ、名人ではなくとも、、そして真っ逆さまに落ちたとしても、神様は、繰り返し繰り返し教え諭してくれるのです。「目をまっすぐに前に注げ。あなたに対しているものにまなざしを正しく向けよ」(箴言4;25)。

行事案内

アシュラム誌

毎月1日発行の会報「アシュラム誌」全6ページをPDFファイルでご覧いただけます。

写真ギャラリー

PAGE TOP