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榎本恵牧師のコラム

2020/03/26

夢でお告げがあったので、ガリラヤ地方に引きこもり、ナザレという町に行って住んだ。     マタイ2;22−23


コロナウイルスの感染の広がりは、世界を震撼させ、今や政治も、経済も、スポーツも、そして宗教さえも、恐怖と不安、そして萎縮の中に陥っている。
テレビで流される閑散としたニューヨークの街やイタリアミラノの映像を見るたびに、なんだかとてつもないことが世界で起こっているのではと、恐ろしくなってくる。去年の年末にホームページのコラムを書いていた頃には、よもやオリンピックが延期になるとは、また海外からのインバウンドが激減する事態が起ころうなどと想像もできなかった。
日本でも「非常事態宣言」の可能性が総理の口から語られ、東京都知事が「首都封鎖」に言及するなど、なんだか雲行きが怪しくなくなってきている。日本は、他の国のような爆発的な感染者はでていないから大丈夫ではと、たかを括っていた人々も、もう他人事ではないと危機感を募らせている。

教会の中でも、早々と礼拝を中止したり、愛餐会を止めるところが出てきている。アシュラム集会もいくつかの地域で、取りやめになっている。センター主催のものに関しては、お知らせしたように、原則場所を貸していただくところがある限り、行うこととしているが、国全体が外出禁止や少人数での会合まで中止となった場合には、残念ながら従う他ない。なんとか、そのような状態にならないよう祈るばかりであるが、同時に、この目の前に立ちはだかる出来事の中からも、私たちは神のみ声を聴き分けていかなければならないと思っている。

ヘブライ語「ダーバール」は、「言葉」という意味と同時に「出来事」という意味も持つ。神は、出来事を通して語られる。それは、出来事の中にある神の意図を見極め、聴き分けることだ。マタイ福音書には、イエスの誕生物語の中で父ヨセフのことが語られる。(これ以降ヨセフの名前は出てこない)身ごもったマリアを密かに離縁しようとした時も、ヘロデの手を逃れエジプトの地へ逃避した時も、また、そのヘロデの死とともにイスラエルに帰って来た時も、それらの出来事が、みな「主が預言者を通して言われていたことが実現するためであった。」(マタイ1:22、2:15、23)と記されるのだ。
「望まない妊娠」も、「問題からの逃避」も、そして「引きこもり」も、それらはどちらかと言えば、ネガティブな出来事のように思える。いや実際それは、誰もが経験したくないものに違いない。もし自分の許嫁が、突然妊娠したと告げられたとしたら、もし権力者に命を狙われ、逃げなければならないそんな目にあったとしたら、そして人目を避け密かに隠れるように暮らさなければならないとしたら。
けれども、その背後に、出来事を通して語られる神の言がある。「見よ、おとめが身ごもって男の子を産む。その名はインマヌエルと呼ばれる」(マタイ1:23)、「わたしは、エジプトからわたしの子を呼び出した」(マタイ2:15)、「彼はナザレの人と呼ばれる」(マタイ2;23)と。苦しみや悲しみ、不慮の事故、わたしたちがもっとも避けたいと願うできごとのひとつひとつのなかにも、実は神の言が隠されているのだ。

私たちの現実の世界で、日々繰り返されている出来事、それは時として、私たちの経験則を超える想定外のことが起こってくる。「オーバーシュート」(感染者の爆発的増加)、ロックアウト(閉鎖)、パンデミック(感染症の世界的流行)、アウトブレイク(感染症の突発的発生)など、今まで聞いたこともなかった言葉が私たちの耳目を集める。けれども、私たちに本当に必要なものは、これらの言葉の背後にある、神の言を見出すことなのではないだろうか。

かつて、17世紀、ヨーロッパでペストが大流行した時のことである。イギリスでもこの恐ろしい疫病の蔓延を恐れ、多くの劇場や大学が閉鎖されたという。役者や劇作家は職を失い、学生たちは、寮を出、実家へ帰らねばならなかった。まさに21世紀の今、私たちの世界で起こっていることと同じである。ところが、ペストが蔓延し、多くの人々が亡くなっていくロンドンの街で、劇作家シェークスピアは「ロミオとジュリエット」を書いた。4大悲劇のひとつ、この劇のクライマックスは、ジュリエットが飲んだ毒薬が、実は偽物であったことが、ロミオには伝わらず、彼女の死を儚んだロミオが自ら短刀を胸に刺し貫き、自死するという悲劇の物語だ。。実は、彼にとどけられるはずの手紙は、感染症の疑いをかけられた使者が足止めを食い、届けられなかった。今や誰もが知っているシェークスピアのもっとも有名な劇の誕生には、こんな背景がある。
また、同じく大学が閉鎖になり、ロンドンを離れ、故郷へ帰ったニュートンは、その田舎暮らしの中で、「驚異の年」とも呼ばれる大発見をするのだ。有名なリンゴの木の話で語られることの多い「万有引力の発見」は、こうして生まれた。

私たちの目の前にうつっている出来事は、しかし、神の言が隠されている。どんな逆境であったとしても、必ずそこにある神の言を見出していくものとなりたい。そうして、この不安や怖れ、引きこもりの時代を生きて行きたいと思う。

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