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榎本恵牧師のコラム

2022/09/05

多くの人は自分の親切を吹聴する。だれが忠実な人を見つけられるだろうか。   箴言20:6 (新改訳2017)


私の大好きなキャロル・キングが1971年に出した名盤「つづれおり」の中に「You’ve got a friend(君の友達)」という曲がある。60年代、最初の夫ジェリー・ゴフィンと共にヒット曲を連発していたキャロルは彼と離婚し、ニューヨークから新天地ロサンゼルスへ移り住む。そこで彼女自身が初めてシンガーソングライターとして作詞作曲し、大ヒットしたのが、このアルバム「つづれおり」であり、その中の一曲で、のちに彼女の友人ジェームステーラーによってカバーされ、大ヒットしたのが、この「君の友達」だ。 私は、今も、この頃の季節 そう、夏の終わりから、秋、冬へと向かっていく時期になると、これを聴きたくなってくる。


「When you ‘re down and troubled and you need some lovin’ care
And nothin’ nothin’ is goin’ right
Close your eyes and think of me And soon I will be there
To brighten up ever your darkest night
君が、落ち込んで、困っている時、少しの愛ある助けを必要としている時、それでも何も
かもがうまくいかない時 目を閉じて僕のことを思ってみて 僕はすぐにそこにいるよ。君の
一番暗い夜を明るくするために」(私訳)。

ギラギラと焼き尽くすような太陽もかげりだし、気がつけば秋の虫たちの声に、長い夜の始まりを予感する。そんな季節の移り変わりを五感で感じながら、私は「君の友達」を探す。「こんな友達がいたら、どんなにいだろう」、「これこそが本当の友だ」と。けれどもしばらく考えて、ため息と共に、心の声が響いてくる。「けれども、こんな絵に描いたような友達がいるのだろうか」と。
「多くの人は自分の親切を吹聴する。だれが忠実な人を見つけられるだろうか」(箴言20:6)。箴言の知恵は、こう冷たく言い放つ。確かに調子の良い時は、誰も彼もが、親切そうに近づいてくるのに、少し旗色が悪くなった途端、潮が引くよう離れていってしまう。あれだけ熱く「真の天のお父様、お母様」と叫んでいた政治家たちが、手のひらを返したように、知らぬ存ぜぬを口にする姿を見ながら、なおいっそう、この箴言の言葉が響いてくるのだ。

「Winter, spring, summer, or fall
All you have to do is call and i’ll be there
You’ve got a friend
冬でも、春でも、夏でも、秋でも 君が呼びさえすれば、
僕はそこにいるよ。   
君はにはそんな友達がいるんだ」(私訳)。

冬から数える季節がある。春、夏、秋、冬と、季節の流れは、いつも順調なものばかりではない。辛さや、悲しみ、そしてどうしようもない寂しさ、そんな時にこそ、「君の友達」が必要なのだ。考えてみれば、今政治家とカルト宗教の抜き差しならぬ関係が暴露され、霊感商法やマインドコントロールの危険が叫ばれてはいるが、実はそれは、このかた何十年と続いていたことなのだ。私たちは、今になって、まだそんなことがあったのかと驚き、怪しんでみはするものの、実はこの間、何十年と、人知れず、カルト宗教から抜け出すことのできなくなった人たちの救出活動を行なっていた、同僚の牧師たちがいたのだ。「その洗脳されていた期間と同じだけ、それを解く時間が掛かるものです」。そう語る彼らこそが、冬から始まる季節を共に歩んでくれる友達に違いない。人知れず、誰からも褒められもせず、忘れ去られていても、友のために、歩んでいた彼らの姿に頭が下がる。冬から数える季節がある。そしてそれは、長く、また繰り返す。けれども、そんな中で、「僕はそこにいるよ」と言ってくれる友を持つこと、いや、そんな友になること、これこそが「君の友達」なのだ。

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