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榎本恵牧師のコラム

2019/01/04

「最後の7つの災いの満ちた7つの鉢を持つ7人の天使がいたが、その一人が来て、わたしに語りかけてこう言った。『ここへ来なさい。小羊の妻である花嫁を見せてあげよう』」   黙示録21:9


今年の干支は「いのしし」。「よーし今年は猪突猛進でやるしかない」などと、新年の誓いをされた方には申し訳ないが、今年の干支「亥」と「いのしし」は何の関係もないらしい。これは12ある干支をわかりやすくするために、動物を当てはめただけで、なんと中華圏では、「いのしし」ではなく「豚」なのだそうだ。植物の成長過程に基づいた十二支最後の干支である「亥」の意味は、「閉ざすの意味で、草木の生命力が種の中に閉じ込められた状態を表しているとされる」(ウキペディア)のだそうだ。冬枯れの大地のその中で、確かに、植物たちは、その新しい命の準備を行っている。それは閉じ込められ死んでしまっているようで、その秘められた命の「核」は確実にその大地の奥に「刻み」こまれているのだ。

昨年2018年を表す漢字に「災」の字が選ばれた。確かにこの年は災害の多い年であった。6月の大阪北部地震が、そのすぐ後には、西日本豪雨が広島、岡山、愛媛を襲い、記録破りの猛暑と台風被害が続いた。そして9月には北の大地を震え上がらせた北海道胆振東部地震が発生。まさに「息つく暇もなく」次から次へと日本列島を災害が襲った。今も、大阪を電車で通ると、ブルーシートがかけられたままの屋根の家があちこちに見える。2025年の万博が開かれることになったと大喜びしている陰で、今も家の修理ができない人たちのいることに、なんだか複雑な思いになるのは私だけではあるまい。

「人類とは、火山噴火口の上で、踊りを踊っているようなものだ」とある哲学者が言ったそうだが、まさに私たちは、この「災」の字の上を生きているのだろう。「南海トラフ地震」の危険性が叫ばれ、私たちは、これから始まる新しい年をある意味で不安と恐れの中に迎えているのではないか。もちろんそれは天災だけの話ではない、大国が覇権争いを繰り広げ、理性よりも感情が政治や経済を動かしかねない、そんな兆候が見え隠れする。よもや、2年連続して、「災」の字が、選ばれることはあるまいと思いながらも、今年は一体何が起こるのやらと、半ば諦めのような気持ちで、新年を迎えた方もおられるかもしれない。

けれども、そんな時にこそ、災いを祝福に変えてくださる方に目を向けていこう。新約聖書の最後にある「ヨハネの黙示録」、そこにはこれでもかというほど世の終わりの恐ろしい様が描かれている。もちろんそれは、当時のローマ帝国の迫害の中にあったキリスト者たちが書いたものであり、様々なメタファー(隠喩)が隠されている。しかし私は、この「最後の7つの災いの満ちた7つの鉢を持つ7人の天使がいたが、その一人が来て、わたしに語りかけてこう言った。『ここへ来なさい。小羊の妻である花嫁を見せてあげよう』」(黙示録21:9)という言葉が、心を捉えて離さないのだ。7という完全数が3つも重なる災いをもたらす天使が、しかし天から降りてくる新しい聖なる都エルサレムを見せ(黙示録21:10)、それが栄光に輝いていた(黙示録21:11)と書くのだ。災のその只中で、新しい栄光を帯びた都を見出す。それは、まさに「亥」の年に、あらゆるものが閉ざされ、枯れ果ててしまっているように見える中、実はそこに新しい命の息吹を蓄えている事と通じるのではないだろうか。

新しい年も、きっと思いもよらない出来事に、私たちは翻弄されることだろう。けれども、そのただ中に、新しい、決して朽ちることのない永遠の命を見出していこう。そして、そこへ向かって邁進していこう。そういえばやっぱり今年は「いのしし」の年。脇目も振らず猪突猛進、進んでいこう。

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