トップページ > 榎本恵牧師のコラム > 寄留者を虐待したり、圧迫したりしてはならない。あなたがたはエジプトの地で寄留者であったからである。
榎本恵牧師のコラム

2017/03/15

寄留者を虐待したり、圧迫したりしてはならない。あなたがたはエジプトの地で寄留者であったからである。    出エジプト22:20


2月13日から3月2日まで、アメリカ、ブラジル伝道旅行へ行って来た。ニューヨークでは、マンハッタン島チェルシー地区にあるニューヨーク日米合同教会で、アシュラム集会と日曜日の礼拝の奉仕を、またブラジル、サンパウロでは、超教派のブラジルアシュラムと、ルージラモスアライアンス教会での礼拝、そして教会アシュラムを行うことができた。例年のことながら、カーニバルのこの時期に、街の喧騒を離れ100名近い人たちが、静まりにくるから驚きである。「たびんちゅ(旅人)牧師」の私にとって一年に一度、海外に住む日系人たちとこうして信仰の交わりを持てることは、ほんとうに嬉しいことでもあり、また大きな学びの時でもある。

ニューヨークで礼拝を守った2月19日の日曜日はアメリカに住む日系人にとって大変意味深い日であった。今から75年前の1942年2月19日に発令されたルーズベルト大統領の「大統領令9066号」によって、米国に住む(特に西海岸)日系人たちは、敵国人として、強制収容されたのだ。その数、12万人もの日系人たちが、一週間の猶予ののちトランク2個分の私物だけを持つことを許され、全米10箇所の収容施設に送り込まれた。1941年の日本のハワイ真珠湾攻撃を境に、彼らが被ってきた痛みの歴史を、私たちは、知らずにいるわけにはいかない(のちにレーガン大統領は、その政策を誤りと認め、当時の日系人たちに謝罪と補償を行っている)。

75年目のこの日、多くの日系2世、3世たちが、ニューヨークの街でサイレントデモを行った。彼らは現在起こっている、トランプ大統領の入国禁止令に、自らの歴史を重ね合わせ、無言の抗議として、自らの首に荷札をぶら下げて行進した。あのころ、日系人たちが荷物のように扱われた、その悪夢が再び繰り返されないようにと。この日、礼拝の中でも、特別な祈りがささげられた。「戦時中の日系人の排斥と収容キャンプなどへの監禁が、今日のイスラム系、メキシコ系アメリカ人や、シリアやその他の国々から移民に対する登録、入国拒否、投獄、国外追放の可能性に対する『前例』として扱われているということを聞き、また私たちの恐怖と不安を増大させています。愛する神様、私たちの隣人に対して、特に、私たちと異なったいで立ち、考え、信仰を持つ隣人に対して、私たちが彼らを理解し、愛し、受け入れることができますように。」(「憶えの日2017年の祈り」より)
神がイスラエルの民に与えられた律法には、「寄留者を虐待したり、圧迫したりしてはならない」(出エジプト22:20)と厳しく命じられている。それは、あなたたち自身も、その寄留者であったからだと、神は語られる。自分たちもまた寄留者であり、奴隷であったことを忘れないこと。これこそが、新しい寄留者や隷属されているものたちに対する抑圧や差別、偏見や不利益をなくす、最も大きな動機となるのだ。もう二度と、私たちと同じような思いを、誰かにさせてはならない。移民の国アメリカで今まさに起こっている出来事に心痛めるとともに、けれどもあの国には、きっと「あなたがたはエジプトの地で寄留者であったからである。」(出エジプト22:20)との神のみ声に聴く者がいることに大いに期待している。と同時に、私たちもまた、6年目の3月11日の日に、福島の子どもたちが理不尽にいじめられているという状況のこの国で、思い起こさなければならないことのあることを深く思う。 「寄留者を虐待したり、圧迫したりしてはならない。あなたがたはエジプトの地で寄留者であったからである」(出エジプト22:20)この言葉は、私たちにも真実であるのだから。

行事案内

アシュラム誌

毎月1日発行の会報「アシュラム誌」全6ページをPDFファイルでご覧いただけます。

写真ギャラリー

PAGE TOP